乳酸菌は、糖を分解して乳酸を作り出すことが出来る細菌の総称で、人間や動物の腸内、牛乳などの乳製品、お漬物などの発酵食品、生の野菜にも存在しています。

乳酸菌の定義

乳酸菌の定義にはざっくりと下記のようなものがあります。

  1. 細胞の形は球状または棒状である
  2. 消費したブドウ糖に対して50%以上の乳酸を産生する
  3. 自ら動くことはない
  4. 細胞壁がある(グラム陽性)
  5. 酸素がなくても生きていける(嫌気性/カタラーゼ陰性)
  6. 内生胞子(芽胞)を作らない = 熱や酸に弱い(※中には作るものもありそれらは有胞子性乳酸菌と呼ばれる)
  7. 人体にとって安全である

特に、(2)で定義されるように大量の乳酸を作ることがその大きな特徴です。

乳酸菌を利用して作られる様々な食品には、おおむね酸味があります。
この酸味は乳酸によるものなんです。

この乳酸は、腸の中で悪玉菌が活動しにくい環境を整えてくれるため、乳酸菌は善玉菌の代表格と言われます。

乳酸菌の歴史

乳酸菌は、昔から様々な発酵食品に利用されてきました。

代表的なものはヨーグルトなどです。

この乳酸菌を最初に発見したのは、『微生物の父』と言われたオランダの科学者、アントニ・ファン・レーウェンフック(1632-1723)と言われています。

彼は、生涯で500もの顕微鏡を作ったと言われていて、その顕微鏡を駆使して身の回りの様々な微生物を観察している中で、乳酸菌を発見したのではないかと言われています。

続いて、乳酸発酵の仕組みを解き明かしたのは、かの有名なフランスの微生物学者、ルイ・パスツール(1822-1895)です。

彼が設立した『パスツール研究所』は、1世紀以上にわたり公益目的で微生物、感染症、ワクチンの研究を続けており、これまでに10名ものノーベル賞受賞者を輩出しています。

パスツールは牛乳、ワイン、ビールの腐敗を防ぐ方法を開発したり、ワクチンによる予防接種という方法を開発したりと、様々な業績を残していることで有名です。

私が毎日美味しいビールを飲めるもの、このパスツールさんのおかげなんですよね。

彼は長い間謎とされてきた発酵や腐敗が微生物によって引き起こされることを初めて解明し、その微生物は他の生物と同じように増殖したり死滅したりすることを科学的に証明しました。

彼の研究はその時代の数十年先を行っていたと言われていて、その功績から『近代細菌学の開祖』とも言われています。

さらに、その乳酸菌を培養する方法を確立したのが、ドイツの細菌学者、ロベルト・コッホ(1843-1910)です。

彼は、寒天培地やシャーレによって細菌のコロニーを作り、細菌を培養するという当時としては画期的な方法を編み出し、炭疽菌、結核菌、コレラ菌など様々な細菌を発見しました。

そして、世界で初めて乳酸菌と免疫の関係を説いたのが、ロシアの微生物学者、イリヤ・メチニコフ(1845-1916)です。

彼は、体内の食細胞が病原体を撃退するという<免疫食細胞説>を唱え、のちにノーベル賞を受賞しています。

その免疫の研究の中で、ブルガリアやスモーリアン地方に100歳を超える元気な老人がやたら多いことを知ります。

その長寿の秘訣を探る中で、注目したのが<ヨーグルト>です。

彼らは乳酸菌で作ったヨーグルトを日常的に食していました。
このヨーグルトに含まれる乳酸菌こそが、病原体から身を守る長寿の秘訣であると考えたメチニコフは、自らも大量のヨーグルトを毎日食べて、健康の維持に役立てたそうです。

このことは、世界がヨーロッパで普及するきっかけを作るとともに、発酵乳や乳酸菌の生理学的な効果についての研究を促すことにもつながりました。

乳酸菌と酵母、麹菌の違い

乳酸菌のほかに、善玉菌の代表格として酵母や麹菌が挙げられます。それぞれを比較するとこんな感じで、分解した後に生成される物質に違いがあります。

【乳酸菌】

  1. 糖を分解
  2. 乳酸

【酵母】

  1. 糖を分解
  2. アルコール
  3. アルデヒド

【麹菌】

  1. デンプンを分解
  2. 糖を生成
  3. 最終的には麹酸を生成

いずれも発酵食品の製造には欠かせない微生物です。

例えば乳酸菌ならヨーグルトやチーズ、お漬物など。酵母はワインやウィスキー、味噌や醤油など。麹菌は味噌、醤油、みりん、お酒などが必要です。

こう見るといずれの微生物も日本の食卓には欠かせないものばかりです。

ちなみに、海外の発酵食品は上記3種のうち、1種類だけで発酵させることが多いのですが、日本の食品は複数の種類を使って発酵させることが多いようです。例えば、

【味噌】

  1. 大豆を硝酸還元菌
  2. 麹菌
  3. 乳酸菌
  4. 酵母菌

の順に発酵

【醤油】

大豆を麹菌と酵母菌で発酵

【甘酒】

お米を麹菌と乳酸菌で発酵

【日本酒】

お米を麹菌と清酒酵母で発酵

大変手間暇はかかりますが、日本食の美味しさを支えているのはこの微生物なんですね。

乳酸菌は生きて届いたほうがいいの?

乳酸菌は『生きたまま届いた方が良い』とよく言われます。

ですが、最近の研究で、実は乳酸菌は死んでいてもしっかりと美容や健康に役立つことが分かってきました

乳酸菌は胃酸や熱に弱く、体外から摂取してもそのほとんどが腸に届く前に死滅してしまいます。

さらにわずかに生き残って届いたとしても、そのほとんどが定着せずに体外へ排出されてしまいます。

そこで注目され始めたのが『死菌』です。

正確には『死菌』に含まれる<菌体成分>や『発酵生成物』です。
最近ではこれらが体に良い影響を与えていると考えられるようになりました。

腸内細菌学の第一人者、光岡知足先生の死菌を用いた実験では、下記のような実験結果が出ています。

  • マウスの寿命が延びた
  • マウスの腸内の善玉菌の量が10倍になった
  • 悪玉菌が減少し善玉菌が増えた
  • 排便に関して改善が見られた

もちろん、死菌だけでなく生菌もカラダに有用です。さらに、その乳酸菌のエサをしっかりと与えてあげることも重要です。

乳酸菌に関して、生きた乳酸菌を『プロバイオティクス』、オリゴ糖や食物繊維など乳酸菌をサポートしたり、乳酸菌(善玉菌)のエサになったりするものを『プレバイオティクス』、死んだ乳酸菌を『バイオジェニックス』と言います。

この3種を出来るだけ多く、バランスよく摂ることが、内面からの美容・健康の近道なのだそうです。

最近では<シンバイオティクス>と言って、プロバイオティクスとプレバイオティクス(バイオジェニックスを含む)を両方摂取することが推奨され始めています。

乳酸菌を摂取するときは、『乳酸菌のエサ』も意識した方が良さそうですね。